- クールな役や無口な役を演じるときに声が小さくなりすぎる
- 声を張らない役で声が小さすぎると指摘される人は向いていない?
- 声を張らない役を上手く演じられるようになりたい
さまざまなキャラクターを演じるなかで「クールな役や無口な役を演じると声が小さくなってしまう」といった悩みを持つ人は非常に多いです。
僕は声優歴10年以上の男性声優chikamichiです!
僕自身も声優の勉強を始めたころは、「クール」や「無口」などの声を張らないタイプの役を演じると声量が小さくなり、困った記憶があります。
そこでこの記事では、声を張らない役柄でも十分な声量を出すための方法をまとめて解説します。
- 声の大きさではなく、通る声(響き)が大事
- 声のボリュームの基準を自分自身にしない
- 「声を張らない役=声を張らない」の方程式を壊す
この記事を読めば、クールな役や無口な役をあなたの役のレパートリーに追加する方法が全て分かります。
声の大きさではなく、通る声(響き)が大事
大前提として、クールな役や無口な役は基本的に大きな声で話しません。
クールな役が大きな声で元気よく話したり、無口な役がハキハキと会話するイメージって全然わきませんよね?
というか、そんな話し方だとキャラがブレてしまって役作りの段階で成立しません。
なので、「声が小さい」と言われたときに単純に大きな声で演じるというのは間違いです。
大きい声には「元気」や「ハキハキ」といった要素がプラスされてしまいます。
その結果、クールな役や無口な役が声を張ったうるさい印象に変わってしまい、上手く演じられなくなるのです。
では、声を張らないタイプの役で「声が小さい」と言われた場合、どのように対処すれば良いのでしょうか?
解決のカギは「声の大きさ」ではなく「声の通り」を良くすること。
「声の通り」とは、声が響いて伝わりやすいかどうかということです。
つまり、声を張らないタイプの役に必要なのは
声が通っている+張っていない声(叫ぶような声はダメ)
を両立した声となります。
単純に「声が小さいなら声を大きくしよう」だけでは、問題が解決しないので注意しましょう。
声量とは「声の大きさ」+「声の通りやすさ(響き)」
声が小さいことを解決するには十分な声量が必要。
そして声量とは「声の大きさ」と「声の通りやすさ」の合計値だと僕は考えています。
つまり、声量を上げるには「声を大きくする」か「声を通りやすくする」かのどちらかが必要になります。
しかし声を張らない役の場合には、単純に声を大きくするだけではキャラがブレてしまうので、「声の通り(響き)」に重点を置く必要があるのです。
クールや無口などの声を張らない役で声が小さくなる場合には、「大きい声」ではなく、「通る声(響く声)」を手に入れることが攻略の糸口となります。
「声が小さくて、聞こえにくい」と言われると、どうしても声のボリュームに意識が集中しがちになりますが、声を張らない役の場合は「声の通りやすさ(声の響き)」が大切だと覚えておきましょう。
発声を改善することで声を張らない役ができるようになる
声を張らない役で「声が小さい」と指摘されると、「自分は声が小さいからクールな役は向いてない。もうクールな役はやめよう」などとへこんでしまいがち。
しかし、そういった人たちは本当にクールな役や無口な役が向いていないんでしょうか?
僕はそうは思いません。
普段から大きい声の人よりも、小さい声の人のほうがクールな役や無口な役に近い感性をもっているに決まっていると思いませんか?
つまり、「声が小さい」と指摘されたからといってクールな役や無口な役が向いていないとは言い切れません。
「クールな役が上手くできない」と「クールな役が向いていない」は必ずしもイコールではないのです。
声が小さくなってしまうのは、単純に現時点の段階で発声が不完全だから上手くいっていないだけです。
演技が上手く作り込めていても、それを表現するための発声が未熟なだけというパターンもありえます。
だから、「声が小さくて、聞こえにくいよ」と指摘されても、クールな役や無口な役を演じることを諦める必要はありません。
発声を改善すればいいだけの話です。ここでの発声の改善とは、声を通りやすくするということです。
逆に「発声の質」が低い状態のままで、いくら頑張っても「張っていない声」と「聞いている人にしっかりと届ける」を両立させるような発声は実現できません。
だからこそ発声の質を向上させるために腹式呼吸や発声練習を毎日おこなうことが重要です。
しかし、基礎の練習はぶっちゃけ楽しくありません。それに短期間で結果が出ないので途中で挫折しがちです。
でも、毎日続ければ、必ず効果が現れますので基礎の練習は是非とも習慣化しましょう。
「発声の質」が上がることで声量も確実に上がります。
そうすることで、声をあまり張らなくても、聞いている人にしっかりと届けることが可能になります。
正直、発声の質が低い状態でいろいろと試しても効果のあるものはないと思います。
時間を使うべきは発声の質を向上させる基礎練習です。
発声の質を向上させることで、誰でも「声を張らない役柄」を演じることが可能になります。
基礎力を上げる練習メニューをまとめた別記事がありますので、興味のある方はご覧ください。
声のボリュームの基準を自分自身にしない
声を張らないタイプの役を演じるときに、声が小さくなってしまうことのもうひとつの原因として、「自分の素の声量」を基準にして声の大きさを決めていることが挙げられます。
自分自身の声量を基準にしてしまうと、声を張らない役柄の声量は「自分が声を張らない場合の声量」になってしまいます。
ここで問題になるのが、現実世界と創作物の世界での張らない声には決定的な差があるということです。
その差がなにかというと、「確実に聞き取れる音かどうか」という点。
現実世界では小さい声で喋ったときに、「ん?なんて言った?」と聞き返されても、日常会話レベルであれば、再度言い直すことでそこまで問題になりません。
しかし、創作物の世界の言葉は全てセリフです。セリフは聞き取れなかった時点で価値がなくなってしまいます。
これを理解せずに、普段の自分を基準にして発声すると、かなりの確率で聞き取りにくいボソボソとした声になってしまうのです。
これを解決するためには、演技するときの基準を自分の素の声量で考えるのではなく、演技に必要な発声量で考える必要があります。
「聞いている人に伝えること」をクリアするためには、「演技に必要な発声量」を基準(±0)として考えることを徹底しましょう。
そこから声を張らない方向にズラすことで、クールな役や無口な役でも人に伝わりやすい声量が確保できます。
逆に声を張るタイプの役柄も「演技に必要な発声量」を基準に声を張る方向にズラすことで、役作りのクオリティが上がります。
自分を基準に役作りをすることは多いですが、声量に関しては自分基準で考えてはいけない場合があるので注意です。
声量を自分基準で考える場合は自分の声量がどの程度なのかしっかりと把握しておくことが重要です。
現状の自分の張らない声で演じるのではなく、しっかりと届けることに適した発声から逆算して、「相手に届きやすい張らない声」をつくりましょう。
「声を張らない役=声を張らない」の方程式を壊す
声を張らない役柄を演じるには発声の質を上げることが一番の近道ですが、演技のクオリティをさらに上げるには「声を張らない役=声を張らない」という考え方を捨て去るのが効果的です。
といきなり言っても、この記事のはじめで「クールな役や無口な役は基本的に大きい声で話さない」と解説したので混乱してしまうかもしれません。
しかし、そもそもクールな役や無口な役は大きい声が出せないわけではありません。「声を張る」と「声を張らない」の2つのグループに分けた場合に声を張らないに分類されるだけです。
つまり、声を張らない役柄でも声を張る場合や大きい声を出す場合はありえるのです。
これを勝手に「クールな役は声を張れない」と考えてしまうと演技の幅が狭まってしまいます。
- ×:声を張らない役柄を張らない声のみで役作りする
⇒どのセリフでも張らない声になる役作りは間違い
- 〇:声を張らない役柄が、とあるシーンで張った声を出す
⇒怒りのセリフや笑いのセリフで張った声になるのは正しい
基本は張らない声で役作りしますが、セリフを張る場合もあり。
この考え方が自然な感情の流れをつくります。
たとえば、こういった演技が苦手な方はいませんか?
- クールなキャラクターが大笑いする
- 頭脳派なキャラクターが怒る
- 無口なキャラクターが必殺技を放つ
これらの役とシチュエーションは「声を張らない役」と「声を張るシチュエーション」で構成されています。
このようなパターンを声を張らないで演じると笑いや怒りの感情が嘘っぽくなりますし、声を張ってしまうとキャラクターがブレてしまって上手くいきません。
その原因は「声を張らない役=声を張らない」を忠実に守って失敗している場合とそれを打開しようと無理やりに声を張っている場合の2パターンが挙げられます。
つまり、「声を張る」と「声を張らない」の二択で考えていては問題が解決しません。
意味なく声を張るのも、徹底して声を張らないのも演技として不自然です。
これを解決するには「声を張らない役=声を張らない」という考えを捨て、なおかつ声を張らない役でも声を張ってしまう状況の理由を考えるべきです。
声を張ってしまう理由を考えることで、声を張らない役でも自然に声を張ってセリフを言うことができるでしょう。
声を張る理由を考えることで、張る(100%)と張らない(0%)の良いとこどりができます。
張る(100%)か張らない(0%)かと極端に考えるから不自然になってしまうわけで、声を張る理由を考えて、1%~99%の間にある適切な感情を見つけることが自然な演技・役作りをするコツです。
演技は型で考えるのではなく、感情の流れでつくっていきましょう。
声を張る理由を考えることで自然な演技に
クールな役や無口な役が声を張る理由を考える前に、実際にあなたが声を張ってしまう状況ってどんなときでしょうか?
感動したときや面白いとき、怒りを覚えたときや興奮しているときなど感情が大きく揺れ動いているときに人は大きな声を出してしまいがちです。
しかし、その度合いは個人差があります。ある人は感動したけど、ある人は別に感動しなかったというケースや怒りを覚えたときに文句が口から出る人と心の中で処理する人に分かれたりなど千差万別です。
クールな役や無口な役は感情を内側で処理して表に出にくいイメージが僕にはあるので、
自分の中で処理しようとする→処理しきれずにセリフに感情が乗ってしまう
という工程で、声を張る状況を考えてみます。
例として、クールな役が大笑いするシチュエーションで声が張ってしまう理由を考えてみましょう。
クールな役が大笑いする
- なにか面白いことやおかしいことがあって笑いそうになる
- 人前で笑うのは恥ずかしいので普段から我慢している
- しかし、今回は我慢がこらえきれずに声に出して笑ってしまう
- 周りの人に笑い顔を見られて恥ずかしい
- 取り繕うために急いで平静を装う
大笑いするまでの流れは、「笑いそうになる→我慢→無理だったから吹き出す」と極力シンプルにしました。
しかし、「我慢から笑いだす」という流れをつくっただけでも、吹き出したような笑いになる演技プランを導くことができます。
これをただクールな役が大笑いするという事実だけで考えると、唐突に大笑いする不自然な芝居になりがちです。
「笑うシーンだから笑う」で演技を考えるのではなく、「笑うシーンはなぜ笑っているのか?」と考えるようにしましょう。
この作業をすることで、声を張らないタイプの役で声を張るような演技をしても不自然に聞こえなくなります。
ぜひ実践してみてください。