演技の参考にする目的で、アニメを観る声優志望者は多いでしょう。しかし「アニメを観るだけで本当に勉強になっているのか?」と疑問に感じる瞬間もあると思います。
僕は声優歴10年以上の男性声優chikamichiです!
僕自身も昔からアニメが大好きで、放送中のアニメの9割近くを視聴するアニメ廃人の時期もありました。ちょうど声優を目指し始めた頃でもあったので「アニメ鑑賞が声優の勉強になるなら一石二鳥では!」と余計に拍車がかかっていたのです。
しかし結論から言いますが、アニメを楽しく観ているだけでは声優の勉強にはなりません。
当時の僕はムダな時間を過ごしていたんですね…泣
そこでこの記事では、声優志望の方が学習目的でアニメを観る場合の正しい見方を詳しく解説します。
この記事を読めば、学習目的での「アニメの見方」が分かります。
アニメを観ることは声優の勉強になる
アニメ作品を観ることで声優のスキルが上達するのは本当です。
なぜなら、アニメ作品には声優のテクニックや演技のコツがたくさん隠されているから。
(実際には隠しているわけではなく、表面的に観ているだけでは気づきにくいという意味)
どんな分野でも当てはまりますが、プロの技術を直接みて学ぶことは短期間で成長するコツとなります。
とくにアニメ声優を目指す方は、自分がなりたいもののゴールがアニメ作品内で提示されています。
それにもかかわらず「アニメを観ない」という選択肢はないでしょう。
逆に声優になりたいのに、アニメを全く観ていない方は観る習慣を持つべきです。
これはアニメ声優に興味がない方(吹替やナレーター志望)でも観ることをオススメします。
そして、アニメを観る際には、アニメ作品のジャンルが偏らないようにしましょう。
せっかくアニメを観るならジャンル被りを防ごう
なぜジャンルが偏らないようにすべきかというと、同じアニメという枠組みでも、ジャンルごとに求められる演技の種類や雰囲気、狙うべきターゲット層が異なるからです。
具体的に表にまとめてみました。
作品ジャンル | 演技の傾向 | 作品雰囲気 | ターゲット層 |
---|---|---|---|
少年漫画系 | エネルギー多め | 明るい | 中高生(とくに男子) |
子供向け | エネルギー多め | 恐怖系NG | 幼児~小学生 |
恋愛系 | リアルな演技 | ドロドロ | 10代~20代女性 |
現実でも、子どもやお年寄りに対して、口調や話すテンポを変化させますよね。
それと同じように、作品や視聴者のニーズに応えられる演技はその都度違います。
声優を目指すならば、ジャンルごとの演技の違いに敏感になりましょう。
しかし、自分の好みだけで観る作品を選んでいると、作品内容やジャンルが偏ることが多々あります。
僕は感動系の作品が苦手で普段観ません
このままだと「○○系の作品はあまり観ない」「△△系の作品は一切観ない」と不得意な分野が生まれる原因になります。
せっかくアニメを観る習慣があるのに、もったいないですよね。
なので、ジャンルが偏らないように観るアニメを意識的に選ぶべきです。
その際にオススメなのが、自分の観たい作品とは別に、次のような基準で観る作品を選ぶ方法です。
①自分の好みでは観ない作品
ほとんどの方は無意識に自分の好みのアニメ作品を観ます。
娯楽目的でアニメを観るわけですから、当然の行動です。
なので、逆に自分の好みでは観ない作品を選ぶことで、詳しくない分野をなくすことができます。
僕はホラー系が苦手ではなく明確に嫌いですが、研究目的でたまに観てます…泣
②世間的に話題になっている作品
世間的に話題になっているということは、それだけ多くの人が観たいと思った作品です。
自分は興味をそそられなかったとしても、なぜその作品が人を惹きつけるのかを研究することは大切です。
偏り解消+流行も追えて、一石二鳥!
③自分がターゲット層に含まれていない作品
自分がターゲット層に含まれていない作品を人は観ません。
理由は単純で、観てもあまり面白くないと感じるからです。
大人になってから幼児向けアニメを観ても、なんだか味気ないといったふうに。
こういった作品は意識的に観ない限り、観ることはほとんどありません。
しかし、声優を目指すならば、自分が出演することも見越して研究するべきです。
他には異性を対象にした作品なども観ることをオススメします!
好みじゃないアニメも観よう
まとめると、娯楽目的でアニメを観ている時間に加えて、勉強目的でアニメを観る時間も設けようというわけです。
このように選んだ作品と自分の観たい作品をバランスよく観ることで、ジャンルの偏りは解消できます。
好みじゃなかった作品が、実は食わず嫌いしていただけで面白かったみたいな発見もあります
アニメを普通に観るでは意味がない
「アニメを観ることが声優の勉強になるなら、安心して観まくろう」とテレビやモニターに向かおうとした方は少し待ってください。
アニメ作品をただ楽しく観るだけでは、学習効果があまりありません。
なぜなら、アニメを観ること自体に効果があるのなら、アニメ好きの一般の方も声優の技術が高くなっていないとおかしいからです。
それに専門学校や養成所で「アニメ鑑賞」なんていうレッスンがあっても良いはずです。
でも実際には、アニメを観た全員が演技力が上がるわけではないし、アニメ作品を観ることがレッスンとして確立してもいません。
つまり、アニメを普通に観るだけでは効果がなく、学習目的での場合には、普通に観るときとは「異なる目線」が必要になります。
同業者(プロ)の目線
「短期間で成長するコツはプロの技術を直接みること」と言いましたが、もっと詳しく言うならば「学習する目的意識をもって観る」必要があるのです。
たとえば、寿司職人の技術をお客さんの目線で「大将、すごいですね」と見ていても、一向に寿司職人にはなれません。
これを百回、千回と繰り返しても、行き着くのは寿司職人ではなく熱心な常連客です。
寿司職人になりたいのであれば「大将の技術を盗んでやる」といった職人側の目線で観察しなければいけません。
つまり、アニメ鑑賞を声優の勉強に役立てるには、アニメ作品を同業者の目線で観る必要があるのです。
お客さん目線をやめて、同業者目線で観る
アニメ作品を声優の勉強のために観るときは、お客さん目線ではなく同業者目線で観ましょう。
- お客さん目線
普段通りに作品を楽しむために視聴する
- 同業者目線
声優やアニメ制作陣の目線で作品を観察する
ただ作品を見るのではなく、しっかりと観察してください。
普段通りにアニメを楽しんで観るだけではほとんど勉強になりません。
なぜなら、それは受け手としての視点しかないからです。
たとえば、手品師になりたい人が手品をみるときに、お客さん目線で見ていては、手品を純粋に楽しむことはできても、いつまでもタネや仕掛けを理解することはできません。
これを解決するには、お客さん目線をやめて、同業者の目線でみるしかありません。
ちなみにもっと酷いのは、手品をよく理解しておらず、タネも仕掛けもない本物の魔法や超能力だと勘違いしているパターンです。
この場合だと、手品師になるために、魔法や超能力の特訓をやり始めるという最悪の流れになってしまいます。
声優でいうならば、声優を目指しているのに「アニメを観て、声マネの練習ばかりする」とか「カッコいい声やカワイイ声を出す練習をする」みたいなものです。
アニメをただ観るだけは、別に得も損もありませんが、間違った方向に練習を始めると、意味のない練習に時間を費やしたり、変なクセがついてしまう原因になります。
プロの技術を見て学ぶときに大切なのは「どういったテクニックで成立させているのか?」を正しいプロの視点から考察することです。
つまり、プロになるためには、お客さんの目線ではいけないし、間違ったプロ目線でもいけません。
これを「声優とアニメ鑑賞」の関係で考えると、次のようなことを観察して考察できると良いでしょう。
といっても「プロ目線で観察して考察するってむずかしそう」と感じる方も多いと思います。
そういった方は「観察→考察」のはじめの一歩としてアニメ作品を観た時に、
といった小さな疑問をたくさん見つけることから始めましょう。
その疑問の答えを見つけていくことで「見る」から「観察する」に目線を変化させることができます。
具体例を挙げて説明します。
例1:感想「あるキャラのあるセリフに感動した」
↓
疑問:あるキャラのあるセリフになぜ感動したのか?
↓
導き出した答え:感情的なセリフ回しで、心をさらけ出している感じが表現できていたから
例2:感想「このキャラ可愛いな」
↓
疑問:このキャラはなぜ可愛く感じるのか?
↓
導き出した答え:あざといくらいに可愛いと思われる要素を詰め込んだ役作りをしているから
アニメを観て抱いた感想を「なぜそう感じたのか?」と疑問に変換して、自分なりの答えを導き出すといった流れで進めていけば、プロ目線での観察や考察ができるようになります。
その結果、声優の腕前とは関係ない「セリフ自体が良かったから感動した」とか「キャラデザが最強だから可愛い」という答えでも全然構いません。
というか、声優がアニメを観るときは声優の演技に注目すると思いがちですが、演出や脚本に注意を向けることも大切なことです。
作品全体に目を向けることで思わぬ収穫があるので、視野を広げて観察しましょう。
色々と説明しましたが、整理して考えてみると、とても簡単だったはずです。
- step1アニメを観る
- step2観た感想をまとめる
普通はここ止まり
- step3「なぜそんな感想を抱いたのか?」と疑問形に変換
- step4理由を考える
自分なりの答えでOK
プロ目線なんて表現をしていますが、寿司や手品を「うまい!」や「スゴイ!」で終わらせずに、もう少し踏み込んで考えてみるくらいの感覚でオーケーです。
なので、アニメを観たときに「声優の○○さんの演技が上手い!」という感想で止まっている方などは「惜しいな・・」と思ってしまいます。
「あの声優さんは演技力がある」とか「○○って俳優は演技がうまい」という話はよく聞きますが、どういった基準で判断しているのかまで言及する方は少ないですよね。
つまり、演技を観て「うまいな」という感情は生まれるものの、それがなぜなのかを解明しようという考えにまで到達していないのです。
演技がうまくなりたいなら、うまい演技を観るだけではなく、うまい演技を観たうえで「なぜうまいのか?」まで考えられるようになりましょう。
あなたもアニメを観て「面白い!」で終わっていませんか?
アニメ作品を観るときはお客さん目線ではなく、同業者目線で観察することを忘れないでください。
アニメ作品を同業者目線で観察するときのポイント
アニメ作品を同業者目線で観察するときのポイントを3つ紹介します。
①楽しんで観るときと同業者目線で観るときは別にする
アニメ作品を楽しんで観るときと同業者目線で観るときはしっかりと分けましょう。
なぜなら、同業者目線で観ていると、話の本筋以外を追いかけてしまい、物語を純粋に楽しめなくなるからです。
- 自分だったらこのシーンをどういう風に解釈して演じるだろうか?
- この脇役のキャラの演技上手いな、声優は誰なんだろう?
- このシーンは画がヌルヌル動いて、アニメーターさんのこだわりなんだろうな
といった風に、作品を観ている最中に色々と考えてしまって、物語の内容が頭に入ってこないことがよくあります。
僕自身も娯楽目的で観始めたのに、気づけば同業者目線で観ていることがあり、そのたびに反省しています。
エンタメとしてアニメを観るときは頭をからっぽにしてしっかりと楽しみましょう。
そして、そのときは声優の勉強時間にカウントしないでください。
これをカウントしてしまうと「今日はアニメを観て勉強したから発声練習は休んでもいいよね」とサボりぐせができる原因になります。
娯楽目的でのアニメ鑑賞が、声優の勉強には全く意味がないとは言い切りません。
しかし、これを勉強と言い出すと、映画を観ること、ゲームで遊ぶこと、漫画を読むこと、旅行に行くことなど、なんでも勉強の時間になってしまいます。
「娯楽を経験するのも芸の肥やし」を免罪符に、遊んでばかりなのに、勉強していると言い張る方をたくさん見てきました。
そういった方たちは当然ですが、全く成長することはありません。
これを回避するには、アニメを観るときに「娯楽目的なら全力で楽しむ」と「勉強目的なら、娯楽としての面白さを無視して細部まで分析する」にきっちりと分けるべきです。
別に「プロを目指すなら、娯楽としてアニメを観るな」と言っているわけではありません。
「娯楽と勉強で完全に分けて考えよう」というだけの話です。
同業者目線で観る場合は、自分が好きなアニメ作品の2回目以降の視聴や自分が初見の楽しみを失っても別に痛くないジャンルの作品をオススメします。
どんなアニメでも、はじめて観る機会は人生で一度きりですからね。
ひとりのアニメファンとして、純粋に作品を楽しみましょう。
②1話から最終話をまとめて観る
アニメ作品を観るときは、なるべく短期間にまとめて視聴することをオススメします。
なぜなら、記憶は少しでも間が空くと、細部まで保持することがむずかしいからです。
人間の記憶力って、優秀なようで案外ポンコツな面も多々あります。
途中中断していたアニメを久しぶりに見始めたときに、
- 「あれ?この間はどういった終わり方だった?」
- 「このキャラ誰?既に登場したことがある感じだけど記憶にないな」
みたいなことって、誰でも身に覚えがあると思います。
これは学習目的でのアニメ鑑賞の場合にもデメリットになります。
内容を正しく覚えていないのに、作品読解ができるはずがないからです。
僕は、細部の記憶が薄れないように、
- 短期間でまとめて観る(1日や3日間、毎日連続など)
- まとめて観ている期間は他のアニメをなるべく観ない(内容が混ざるため)
といったことを学習目的でアニメを観る場合には徹底していました。
なので、現在放送中のアニメを学習目的で観ることはあまりオススメしません。
毎週1話ずつしか観ることができないので、高確率で記憶が薄れてしまいます。
逆に、動画配信サービスなどで全話が公開されている作品なら、短期間でまとめて何度でも観れるので勉強の教材に最適です。
③同業者目線で観るときに「ながら見」はNG
同業者目線でアニメを観るときは「ながら見」をしてはいけません。
「ながら見」では注意が散漫して、練習として成立しないからです。
- 他の作業をしながら、モニターでアニメを流しておく
- とりあえず自宅にいる間はアニメを流しておく
こんな風にアニメ作品をBGM代わりに流している方も多いんじゃないでしょうか?
なので「ながら見で普段からアニメを観ているけど、別に注意散漫にはならないよ?」と考える方もいるでしょう。
しかし、学習目的でアニメを観る場合には他のことと並行しながら観ることはほとんど不可能です。
なぜなら、同業者目線で観るときは、話の本筋や声優の演技に画の動き、演出内容など大量の情報を一度に処理しなければいけないからです。
僕自身も学習目的でのアニメ鑑賞のときには、ものすごい集中力で観ていますが、やはり一度に全てを把握することはできません。
そういった時は、同じシーンを何度もリピートして確認しています。
視聴中「今のセリフ、良かったな」
↓
「なぜそう思ったんだろう?もう一度確認してみよう」
↓
セリフに注目して何度も確認
しかし、セリフ回しにだけ注目していると、全体の流れや演出についてまで、注意深く観察することがむずかしいです。
結局、同じ話を色んな視点で何度も繰り返すなんてことはよくあります。
なので、学習目的でのアニメ鑑賞は「集中して最初から最後まで観る」というよりも「作品をブツ切りにして、ブロックに分けて何度も観る」みたいな感覚の方が近いです。
ぶっちゃけ、これを他の作業もやりながらなんて、聖徳太子レベルじゃないと無理です。
同時に複数のことが考えられる方でなければ「ながら見」はオススメしません。
(僕は頭が痛くなって早々に諦めました。というか人間業じゃないです)
普段「ながら見」でアニメを観ている方は、残念ながら集中して観ることができていないと思います。
といっても、娯楽目的なら、軽く雰囲気を味わうような見方でも全然構わないわけですから、日常的に「ながら見」すること自体が悪いわけではありません。
あくまで学習目的での「ながら見」はNGというだけです。
(アニメの楽しみ方は人それぞれですからね)
「忙しくて、アニメを観るだけの時間を確保するのがむずかしい」という方は、ほぼ脳をつかわない作業と一緒に「ながら見」することをオススメします。
- 入浴中にアニメを観る
- 通学、通勤中の電車やバスの中でアニメを観る
こういった「ながら見」なら、アニメを観ることだけに集中できるので、練習効果があります。
なので、忙しい日々を送っている方でも、
- 自宅でのまとまった時間は発声練習
- スキマ時間はアニメ鑑賞
といったような時間の使い方をすれば、練習時間が確保しやすいでしょう。
アニメ鑑賞で勉強する際のコツは、アニメを観ることだけに没入できる状態をつくることです。
アニメ鑑賞するなら動画配信サービスがオススメ
学習目的でアニメ鑑賞する際には、動画配信サービスを利用することがオススメです。
このように、動画配信サービスを利用することで、効率的に同業者目線でアニメを観る環境を整えることができます。
テレビ放送分を録画したり、実店舗でDVDなどをレンタルすることもできますが、上で挙げたメリットを全て網羅することはむずかしいでしょう。
今の時代、時間や金銭面、利便性で考えても、動画配信サービスに勝るものはないです。
僕もずっとレンタル派だったのですが、レンタルだと外出時やお風呂で観る際に、DVDプレーヤーが必要で持ち運ぶのが面倒でした。
動画配信サービスなら外出時の必需品であるスマホが一台あれば環境は整いますし、お風呂での視聴も防水対応のスマホが多いので安心です。
事実、動画配信サービスに出会ってから、アニメなどを観る時間も多くとれるようになりました。
スキマ時間を有効に使いたい方には、本当にオススメです。
今はどの動画配信サービスも、無料視聴期間を設けているので、一度試してみて利便性を確かめてみるのも良いでしょう。
比較できるように無料視聴期間がある動画配信サービスをまとめたので、よければ参考にしてみてください。
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